着物は自宅で洗えます
当サイトは「普段着物」をテーマに記事を書いております。結婚式・七五三・入学式・卒業式、お茶の席など改まった場ではルールやマナーが必要となり、この記事の内容は適さない場合があることをご了承ください。
はじめに
訪問着のような特別な着物なら高いお金を払ってでもクリーニング(専門家)にお願いしますが、普段着としての着物は自宅で洗いたいですよね。
私は「ふだん着物」なら木綿もポリエステルも絹も自宅で洗ってしまいます。
一般的に天然素材の着物を洗うのはクリーニングか専門家!!と言われていますが、ふだん着物は1,000〜3,000円の安さで購入しているため「自己責任」で絹であっても自分でジャブジャブ洗ってしまいます。
自宅で洗うとこんなトラブルが
しつこいほど繰り返しますが、自宅での洗濯は自己責任です。
失敗しても仕方ない、成功すれば儲けものくらいの気持ちでいることが大事です。
値段に関係なく「この着物は失敗できない!!」と思うのならクリーニングに出しましょう!!
- 縮む
-
着物の多くは天然素材で出来ており、洗ったら縮みます。
特に縦に縮みやすいため着丈がギリギリの着物は注意が必要です。2〜3回ほど洗うとそれ以上は縮まなくなります。ポリエステルは天然素材ではないため洗濯で縮むことはめったにありません。私は「ふだん着物」は洗う(短くなる)ことを前提に購入していることが多いため、短くなっても対丈にしたりあえて短く着たりしています。
- 袷は表地と裏地にズレが出る
- 袷や羽織など、表裏で別々の生地が使われてるものは生地による収縮率の違いで引きつったような状態になる可能性があります。変なシワができてしまうので裏側を一度外して縫い直す、などの手間がかかることも。
- 色移り
- 濃い色・黒・青・紫・赤などは移りの可能性があります。
- 質感の変化
- 特に絹!!失敗すると美しかった光沢は失われゴワゴワに・・・・
- 破れる
- 着物は水分を含むと重たくなります。特に袷は表生地と裏生地の間に水を溜め込むため相当重たいです。
着物は手縫いの箇所があり、洋服のように扱うと縫い目にかなり負担がかかって糸が切れてしまう可能性もあります。アンティークは要注意!! - 強烈な臭いを発する
- 防虫剤として樟脳かナフタリンを使っていた場合、着物を水につけると強烈に臭います。ナフタリンは気化して繊維の奥まで染み込んでおり水につけると溶け出してくるのです。リサイクルで購入した着物を洗った時に異臭騒ぎレベルの臭いを発するものがありました(笑)。乾燥すると臭いはなくなりますのでご安心ください。
洗う前に確認しよう
素材
着物の生地の素材は、おおよそ以下の5つです。
絹・麻・木綿・ウール・ポリエステル
一般的には「木綿」「ポリエステル」は自宅で洗える着物、「絹」「麻」「ウール」は自宅では困難な素材と言われています。というのも、【自宅で洗うとこんなトラブルが】でズラズラと書いたものは「絹」「麻」「ウール」で起こることが多いからなんです。
後述しますが 「絹」「麻」「ウール」を自己責任でOKなので洗いたい!という方は洗濯機ではなく手洗いしてください。その方が少しでもトラブル回避になります。
この着物・・・・・絹なの?ポリエステルなの??分からない!!!という方へ。
安心してください、私も全く分かりません。現代着物ならタグに表示されていたりしますがタグがなかったりアンティークだったら本当にわかりません。
「燃やす」「顕微鏡で見る」などの見分け方がありますが面倒臭がりの私は「ポリエステルかもしれないが絹だと思って洗おう」と手洗いしてます。
ちゃんと区別されたい方は、こちらのサイトが詳しく見分け方を紹介されています。
着物の生地の見分け方(ICHIROYA流:決定版)
刺繍、金箔、紋入り
潰れたり、変色したり、ボサボサになる可能性がありますので自宅洗いはオススメしません。
洗濯表示
「洗濯表示(絵表示)」がついている着物もありますので必ずチェックしてください。
「洗濯表示(絵表示)」に水洗いできるマークがあるか確認します。水の温度設定など表示にしたがって取り扱いましょう。
洗濯表示の内容はこちらを参照ください。
花王 洗濯表示一覧
用意するもの
おしゃれ着用洗剤
私は花王の「エマール」を使っています。
いわゆる「おしゃれ着用洗剤」ならOK。洗浄力が高いアルカリ性の洗剤や蛍光剤・漂白剤が入っているものは色落ち・ゴワゴワの原因になるので避けましょう。
ウールの着物を洗う場合は、ウールが洗える洗剤を使用してください。
私は柔軟剤は使用しませんが、あまりにもゴワゴワすぎる場合はすすぎの最後に少量の柔軟剤を入れると仕上がりがやわらかくなります。
「おしゃれ着用洗剤」はやっぱり普通の洗剤と比べると汚れを落とす力は弱いです。結構汚れていたり、何度洗濯しても落ちない汚れがある場合はクリーニングや専門店に出しましょう。
着物用ハンガー
着物は肩の位置が普通の洋服と異なるため、洋服用ハンガーを使うと形が崩れてしまったり変な跡がついてしまいます。
幅が広い着物用ハンガーを使いましょう。伸縮性のものですと場所を取らないのでオススメです。
1,000〜1,500円ほどで購入できます。
洗濯ネット
たたんだ着物がぴったり入るサイズを選びましょう。
着物よりも大きいネットを使用するとシワや傷み・型崩れができやすくなってしまいます。
逆に小さすぎると生地が重なって均等に洗えなくなります。
私は洋服に使用している洗濯ネットを使っていますが、着物・浴衣用の洗濯ネットが販売されています!!こちらの方がシワは軽減されると思います。
洗濯おけ(手洗いの場合)
たっぷりの水ですすいだ方が早く洗剤も落ちるため、広くて水が沢山入る桶を使用します。
もちろん洗面所や湯船で洗ってもOK!!
こちらの商品は折りたたみ式なのですきま収納できて個人的にオススメです。
マスク・手袋(手洗いの場合)
着物によっては繊維の奥まで染み込んでいた樟脳やナフタリンが溶け出して強烈な臭いを発します。換気していても具合が悪くなる人もいると思いますのでマスクを用意しておきましょう。
また、着物を水につけるとビックリするくらい水が濁ると思います。汚れの他に、布に染みこんだ染料も多少出てくるので気になる方は手袋をして手洗いしてください。
事前準備
事前準備1
色落ちチェック
必ず色落ちチェックをしてください!!
どの着物も多少の色落ちはあります。
ですが、色落ちが激しい着物・薄い色の部分が多く色落ちしたら目立つ着物は自宅での洗濯はオススメしません。
もし色移りした場合、その部分を綺麗に落とすには専門家にお願いする事となり結果高くついてしまう・着物が痛む事になってしまいます。最初から専門家にお願いしましょう。
- 色落ちチェックの方法
- 洗剤の原液を目立たないところにつけ、3〜5分ほど待ちます。白い布で洗剤をつけた部分を叩き(絶対にこすらない!!)どの程度色がつくか確認します。
事前準備2
シミチェック
シミは時間が経過するほど落ちにくく、目立ってきてしまいます。早めに対処しましょう。
シミ抜きをする時は強くこすらない・叩かない!
ゴシゴシこする・叩くとシミが繊維に染み込んで取れにくくなるだけではなく、着物の生地が傷んでしまうのでやめましょう。
- ファンデーションや日焼け止め・油性インクペン(油性のシミ)
- シミの下に布を敷き、クレンジングオイルを直接汚れの部分につけてシミの上からガーゼで優しく叩き布にシミを移します。
- 食べこぼし(水性のシミ)
- シミの下に布を敷き、中性の食器洗い洗剤を直接汚れの部分につけてシミの上からガーゼで優しく叩き布にシミを移します。
- チョコレート・バター・マヨネーズなど(油性と水性が混ざったシミ)
- 上記の油性のシミ抜きをした後、水性のシミ抜きを行います。
- 泥はね
- まずはドライヤーなどを当ててしっかりと乾燥させ、歯ブラシで一定方向に擦り泥をはらい落とします。上記の油性のシミ抜きをしますが、泥汚れはアスファルトや排気ガスなど様々な油分を含んでいるためうまく落ちない時は早めにクリーニングに出しましょう。
面倒臭がりな私は汚れ部分を手で揉んで洗うことが多いですが、それでも汚れが落ちない場合は歯ブラシで一定方向に優しく擦っています。
事前準備3
着物をたたむ
着物を「袖たたみ」します。
たたんだ状態で洗うことによって余計なシワや生地の痛みを軽減させます。
手洗いの場合
では洗ってみましょう!
事前の色落ちチェックで大丈夫であっても、いざ洗たくすると色が移ってしまうことも充分考えられます。他の着物に色移りさせない為にも必ず1点洗いしましょう。
- STEP1
-
着物を洗濯ネットに入れる
手洗いの場合、洗濯ネットにいれるかどうかはお好みで。私はアンティーク着物が多いため糸が切れないよう洗濯ネットに入れて手洗いしています。
洗濯ネットはたたんだ着物がぴったり入るサイズを選びましょう。 - STEP2
-
つけ置きする
洗濯桶にたたんだ着物がしっかり浸かるぐらいの水をためます。
水の温度が高いと色落ちしやすくなりますのでお湯は使わないでください。「洗濯表示(絵表示)」に水の温度設定が表示されている場合はそれにしたがってください。
そこに洗剤を溶かします。規定量よりも少なめにするとすすぎなどの作業が楽になります。
10分程度つけ置きしてください。 - STEP3
-
押し洗いする
優しく押し洗いする。
ネットに入れないで洗う時も着物はたたんだ状態にして押し洗いしてください。
ぜったいにゴシゴシ洗わないこと!!
よほど汚れていなければ洗いは1回で十分なのですが、アンティークや長年洗っていない着物だとビックリするくらい水が真っ黒になります。また布に染みこんだ染料も多少流れ出します。私の場合、水が真っ黒になってもひとまず洗いは終わりにします。洗剤を追加したり何度も洗う事でアンティークの生地を傷めさせないためです。
- STEP4
-
すすぎ
水を捨て、着物の水気を切る。
新しい水をたっぷり注いだら着物を入れ優しく押しながらすすぎをする。
洗剤の泡が消えるまで2〜3回繰り返す。着物の水気を切る時もギュッと絞らず押しながら水気を切ると生地が痛まない。
またきちんと着物の水切りをしないと着物に含まれている洗剤が新しい水に入ってしまい、いくらすすいでも洗剤の泡が消えません。水を変えるたびに着物の水切りをしましょう。
また着物を水からあげる時は、一部だけ持って引っ張ると糸が切れてしまうため必ず着物全体を持つように!! - STEP5
-
すすぎの最後に柔軟剤を入れる
私は柔軟剤は使用しませんが、あまりにもゴワゴワすぎる場合はすすぎの最後に少量の柔軟剤を入れると仕上がりがやわらかくなります。
- STEP6
-
水切り・脱水
すすぎが終わったらしっかりと着物の水を切ります。
洗濯ネットに入れた状態で、洗濯機で1分程脱水します。もし設定できるのであれば「一番弱い」状態で脱水をかけてください。
どうしても洗濯機を使いたくない方は、着物をバスタオルで挟んで水分をとってください。
まだポタポタ水が滴り落ちるくらいで大丈夫です。私は綿やポリエステルは洗濯機に、絹やアンティークはバスタオルで水切りするようにしています。バスタオルでの水切りは大変だし非効率ではありますが、着物の状態によって使い分けるといいと思います。
- 終了
洗濯機で洗う場合
綿素材の着物や汗をたっぷり吸っている浴衣は洗濯機で洗ってしまいます。
手洗いに比べたらすごく楽チン!
事前の色落ちチェックで大丈夫であっても、いざ洗たくすると色が移ってしまうことも充分考えられます。他の着物に色移りさせない為にも必ず1点洗いしましょう。
- STEP1
-
着物を洗濯ネットに入れる
必ず洗濯ネットに入れてください。
洗濯ネットはたたんだ着物がぴったり入るサイズを選びましょう。 - STEP2
-
「ドライ」または「手洗い」コースで洗う
規定量よりも少なめに洗剤を入れます。
柔軟剤はお好みで入れてください。私は柔軟剤は使用しませんが、仕上がりがやわらかくなり静電気防止にもなります。
水の温度が高いと色落ちしやすくなりますのでお湯は使わないでください。「洗濯表示(絵表示)」に水の温度設定が表示されている場合はそれにしたがってください。
通常コースで洗うと着物の生地を傷めてしまいますので必ず「ドライ」または「手洗い」コースで洗い、すすぎます。 - STEP3
-
脱水
1分程脱水します。もし設定できるのであれば「一番弱い」状態で脱水をかけてください。
まだポタポタ水が滴り落ちるくらいで大丈夫です。 - 終了
乾かし方
どんなに面倒臭がりでも乾燥機は絶対に使ってはダメ!!!
乾燥機の熱で生地が激しく縮んでしまいます。
まだ水がポタポタ滴り落ちる程度で乾かす方が水分の重みが下へ伝わり、その重みで縮みを軽減できるのです。
- STEP1
-
着物ハンガーにかけてシワを伸ばす
洋服を干すのと一緒で、パンパンと叩いたり適度に引っ張ってシワを伸ばしてください。
あまり力を入れて引っ張ると糸が切れるのでご注意を。着物は肩の位置が普通の洋服と異なるため、洋服用ハンガーを使うと形が崩れてしまったり変な跡がついてしまいます。幅が広い着物用ハンガーを使いましょう。
- STEP2
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直射日光を避けて陰干しする
直射日光が当たると色褪せの原因になるので必ず陰干ししましょう。
理想は風通しの良い日陰なんですが、前述したようにまだポタポタ水が滴ってくるため私は風呂場で干す事が多いです。 - 終了
仕上げのアイロン
着物が乾いたら必要に応じてアイロンをかけましょう。
生地によってはアイロンをかけるとテカってしまうものがあります。
私は裏側からアイロンをかけるようにしていますが、表側にアイロンを当てる場合は必ず当て布をした上からアイロンをかけてください。
なかなかシワが取れない場合は、当て布に霧を吹き素早くアイロンをあてます。
アイロン後は熱が冷めるまで着物ハンガーにかけて置きます。
アイロンをかける時の注意点
- 木綿以外の生地ではスチームは厳禁
特に絹は濡れた場所がシミになります。スチームは絶対にダメ!! - 絞りの浴衣はアイロンをかけない
シボがなくなってしまいます。 - 刺繍や金銀箔にはアイロンを当てない
潰れたり、変色する可能性があります。
さいごに
お疲れさまでした!!
トラブルなく洗濯できたでしょうか?
着物を着る機会が増えるとどうしても化粧がついたり、食べ物こぼしたりと汚すことも多くなってきます。それを洋服のように自分で綺麗にできればもっと着物生活が楽しいものになると思います。